「科学物質過敏症」になると、たまたま通りかかった工事現場でも頭痛やかゆみが起こったり、道ですれ違った人の香水で気分が悪くなってしまうなど、通常の社会生活を送るのが困難になることがあります。身体の中に科学物質の抗体が出来てしまってからでは手遅れですから、新築時には特に気を付ける必要があります。24時間換気システムがある場合でも最低1ヵ月、換気システムが無い場合には、こまめに出向いてすべての窓を開けることを繰り返して最低1ヵ月半~2ヵ月くらいは使用を開始せず通気することが必要でしょう。またその際、家具の引き出しや押入れなどを開けておくことも重要です。閉めておくと、その後数年間も科学物質が溜まったままになってしまいます。
実はカオリは最近、瞼の上が赤く腫れるという現象に悩まされてきました。瞼の上が赤く腫れて目が開きづらくなるのです。「何かのアレルギーかしら?」とも考えましたが、最近の生活で特に変わったことは思い当たりません。何が原因だろうとずーっと考えていたのですが、ハタとある因果関係に気がつきました。過去の日記をチェックしてみると、打ち合わせでカオリハウスに行った次の日には必ず瞼が腫れていたのです。そう言えば小学生の頃、図工の時間などクラス全員でマジックインキを使ったりすると気分が悪くなっていたことを唐突に思い出しました。
カオリハウスはいわゆる総2階ではありません。平屋の屋根に勾配を持たせ、屋根裏部分に2階を造るという設計になっています。その為、2階部分にすべての汚染空気が集まり易くなります。円谷さんはシックハウスにとても神経質です。カオリハウスでも最大限の配慮をして頂きました。それでも塗料や接着剤などに含まれている化学物質が大量に空気中に漂うと、きちんと排気されるまではシックハウスになる可能性があるのです。カオリはカオリハウスに見学に行って、2階に上がろうとすると、階段の途中までは平気なのですが、中間より上へ行くと頭がキーンとして気分が悪くなり、変な匂いに我慢出来なくてすぐに1階へ降りてきていました。
「円谷さん、2階がクサイですね」
クサイ匂いに敏感なカオリは、すぐに状況を訴えました。
「うーん、そうですね。排気量が足りないのかな」
ちょっと焦る円谷さん。
どうやら設計よりも実際の排気量が少なくて、うまく汚染空気が排出されないようです。これは困ったことになりました。しかも2階は寝室になる予定です。こんな所に寝たらカオリ、朝には泡吹いて瞳孔開いちゃうよ。
「何とか対策を考えてみます」
すでに円谷さんのアタマの中では色々な計算が行なわれているご様子。完了したと思っていた建物部分に、また新たな工事が必要となりそうです。家作りって最後の最後まで何が起こるか分からないですね。本当に大変なお仕事だと思います。
後日、円谷さんから2階の三角屋根の頂点部分に24時間換気用の換気扇を付けて対応したいとの連絡がありました。その換気扇は局所換気用で消費電力が2.1Wと少なく、騒音が17dbと低く、排気効率もバッチリなようです。ちょうど建築基準法の改正で2003年7月1日より、シックハウス対策のため、建築物のすべての居室(人間がある一定時間滞在する部屋)について、換気装置の設置義務化が決まりましたので、メーカーがそれに対応した新商品を発売したばかりでした。
換気扇をつければカオリハウスでも安心して眠れそう?その答えは、換気扇を稼動させた状態で1週間くらい経った後で、カオリがカオリハウスの2階に行った次の日に分かる筈です。カオリの瞼が腫れなければ大丈夫。ちょっとドキドキですね・・・(後日、大丈夫だと判明しました。ホッ)。それでは、カオリハウスはシックハウス?いえいえ、それはちょっと早合点です。カオリが言いたいのは、例えシックハウス対策をしていても、新築直後では塗料や接着剤などに含まれている化学物質が大量に空中に漂っていることがあるということです。ですから新築後は1ヵ月以上、換気をしてから利用を開始した方が良いと思います。その間に換気経路のバランスに問題が発見されれば手直しも必要でしょう。そうやって、身体の中に科学物質の抗体が出来ないよう細心の注意をすることが、結局は自己防衛となるのです。
なお、科学物質の強制排除という観点から、最近「ベークアウト」という手法が話題になっていますので、触れておきたいと思います。ベークアウトとは、一定時間室内温度を高めてホルムアルデヒドなどの化学物質を放散させたあと、換気を行うことを繰り返して強制排除しようとする手法です。具体的には、36℃~40℃くらいで1週間ほど家全体を暖房して、3日間くらい換気をするということを繰り返し行ないます。ベークアウトについては、各方面で研究が重ねられていますが、未だ条件や手法が確立されておらず、今後の検討が待たれます。急激な暖房による材料劣化の懸念などもあるようです。
カオリハウスの場合には、ちょうど完成した時期が夏場であるということもあり、完全に閉め切ると室内温度が30度、室内湿度が65%くらいになります。この状態で24時間換気を行なうと、適温で放散された化学物質がどんどん排気されます。そこで今回はベークアウトまでは行なわず、その代わり、使用開始前に長期間の機械換気を行なうこと(1ヵ月以上)で対応することにしました。新築時のベークアウトは効果が高いようですが、急激な乾燥で建具に狂いが生じたり塗装の劣化が起こる可能性があります。せっかく円谷さんや職人さん達が一生懸命に建てて下さったカオリハウスでそれを実施するのは、ちょっと怖い気がしました。
また、ホームページをご覧頂いた方からメールで、ホルムアルデヒドを吸着させるために紅茶パックを使う方法があることを教えていただきました。カオリはまず、試しに自宅の戸棚や押入れの中に市販のお茶パックに大さじ2~3杯紅茶の葉を詰めて置いてみました。結果、鼻にツンとくるような独特の臭気がほぼ吸い取られ、ほとんど匂いを感じなくなりました。これはかなりの吸着力がありそうです。もちろん、カオリハウスでも早速、クローゼットや食器棚など色々な所に紅茶パックを置きまくりました。ホルムアルデヒド対策として手軽に行なえる方法ですので、試してみるのも良いかと思います。
(English text will be provided via translation tools.)
Let’s Enjoy Nasu with Kaori!
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62. シックハウス? 62. Sick House?
カオリハウスは建物部分の工事がほぼ完了し、後は庭など外回りを残すだけとなりました。その状態ですでに1ヵ月が過ぎようとしています。建物の工事が終わっているのに何故、利用しないのか?と疑問に思われる方がいらっしゃるかも知れません。それにはもちろん理由があります。たとえシックハウスに気を遣っている建物であっても、新築直後には塗料や接着剤などに含まれている化学物質が大量に空気中に漂い、「化学物質過敏症」になる可能性が高いからです。ですからカオリハウスでは、ここ1ヵ月は24時間換気をフル稼働させて換気を行なっています。1時間に0.5回の換気が行なわれる計算ですから、2時間で建物すべての換気が出来ます。24時間で12回、1ヵ月(31日間)では実に372回もの換気が行なわれる計算です。それでもカオリの感覚では、それだけ換気をして、やっと何とか利用できるかしら?というレベルのように感じます。
Kaori House’s building work is almost complete, and only the exterior such as the garden remains. Even in a new house designed with care for sick-house issues, right after completion a large amount of chemical substances from paint and adhesives can linger in the air, increasing the risk of “chemical sensitivity.” For that reason, Kaori House has been running its 24-hour ventilation at full capacity for about a month.
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この体験談の読み方
各ページでは、那須での別荘建築について、土地探し・建築家との打合せ・工事・完成後の暮らしの様子などを順に紹介しています。
興味のある部分から読んでいただいても構いませんし、最初から順に読んでいただくと、より流れがつかみやすいと思います。
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How to read this story
Each page shows one step of building the vacation house in Nasu, such as land search, meetings with the architect, construction, and daily life after completion.
You can start from any part you like, but reading in order may help you understand the full flow more clearly.